「伝統工芸品」とは、一般的に長年にわたって受け継がれた技術により作り出される美術品や工芸品のことを指す。また近年、伝統的な技法や伝統を受け継ぎながらも、現代の生活に根付いた製品を発信する若き職人たちも現れ、目覚ましい発展を遂げている。

100年以上にわたる伝統とイノベーションが織りなす日本の“伝統工芸品”

一口に「伝統工芸品」といっても、その定義を知っている方は多くはないだろう。伝統工芸品とは、狭い意味では法律に基づいて認定された「伝統的工芸品」のことを指す。そして今、伝統的な技法や伝統を受け継ぎながらも、現代の生活に根付いたものづくりへとイノベーションを起こそうとしている若き職人たちの台頭により、伝統工芸品はその意味を広げ、より魅力あふれるものへと変化しようとしている。ここでは広い意味での日本の伝統工芸品について、詳しく解説しよう。

「伝統的工芸品」という呼称は法律に基づいて認定

一般的に「伝統工芸」「伝統工芸品」と呼ばれるものには明確な定義はなく、日本に数多く存在する工芸品のなかでも、長年にわたって受け継がれる技術により作り出される美術品や工芸品のことを指している。これとは別に「伝統的工芸品」と呼ばれるものは、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(略して「伝産法」)」に基づいて経済産業大臣が認定した工芸品を指す。

伝産法の歴史と背景

伝産法が公布されたのは昭和49年。その背景には、高度成長に伴う大量消費や使い捨ての生活に対する反省から、伝統的なものや本物志向が見直され、伝統的工芸品産業を立て直そうという気運が高まったことがある。加えて、伝統的工芸品産業においては後継者の確保や原材料の入手が困難になり、産業としての存在を失いかねない危機に直面していたことも法律の制定を後押しした。

伝統的工芸品の認定は、工芸品の産地組合などからの申請を受けて指定要件を満たすかどうかが審議され、満たしたもののみ経済産業大臣に認定される。認定された事業には、必要な経費の一部が国や都道府県などから交付され、産地全体の振興の一助となっている。

「伝統“的”工芸品」とされるのは、主要な部分は継承されてきた伝統に基づき、その持ち味を維持しつつも、現代の需要や環境に適するように改良された製品作りを後押しする意味を含んでいると考えられる。平成29年1月26日現在、伝統的工芸品は全国に225品目。伝産法に基づいて審議を行う「産業構造審議会製造産業分科会伝統的工芸品指定小委員会」では伝統的工芸品の新規指定や新たな技術・技法の追加が行われ、今後も増え続けることが期待されている。

伝産法で規定される要件

  1. 主として日常生活の用に供されるものであること

伝統的工芸品は生活を送るうえで必要な用具として、また冠婚葬祭や節句などの行事において、長い間多くの人たちによって使われてきた。そして改良されながらも、用途や素材、色、紋様、形は今日に継承されている。

  1. その製造過程の主要部分が手工業的であること

全工程が手作りではなくても、製品の形態、デザイン、品質を継承する工程は手作りであることが伝統的工芸品の要件に挙げられる。工芸品の誕生時にはすべて手作りであったが、歴史の変遷により機械化が取り入れられた工程があったとした場合、主要部分が手作りであれば差し支えはない。

  1. 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること

およそ100年以上の長きにわたって継承され、多くの職人によって改良されながら磨かれてきた技術や技法で製造されたものが伝統的工芸品として認められる。

  1. 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること

自然由来であり、その持ち味が生かされた素材や原料は、およそ100年以上継承されている。今日、入手が困難な原材料については、同種の原材料に転換することが認められる。

  1. 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること

一定の地域で、10企業以上または30人以上程度の規模の製造者により製造されている。産地全体の地域産業として成立し、発展してきたものを伝統的工芸品と呼ぶ。

日本の伝統的工芸品225品目「業種」一覧

  • 織物 37 品目
  • 染色品 11 品目
  • その他の繊維製品 4 品目
  • 陶磁器 31 品目
  • 漆器 23 品目
  • 木工・竹工品 32 品目
  • 金工品 15 品目
  • 仏壇・仏具 17品目
  • 和紙 9品目
  • 文具 9 品目
  • 石工品 4 品目
  • 貴石細工 2 品目
  • 人形・こけし 8 品目
  • その他の工芸品 20 品目
  • 工芸材料・工芸用具 3 品目

これからの伝統工芸を担う若い力

上でご紹介したような法律に基づいて認定される伝統的工芸品とは異なり、近年目覚ましい発展を遂げているのが、イノベーティブな若い職人が中心となって手がけられている次のような伝統工芸品だ。彼らは組合などに属さず自力で新商品の開発を行い、国内外の展示会に参加するなどの活動を行っている。

  • 株式会社我戸幹男商店(漆器、木工/石川県)

木地屋職人として木地師の理念を受け継いできた伝統があり、漆器の元となる木地の完成度に拘っている。近年では、伝統的なろくろの技法と現代的なデザイナーとのコラボレーションで、実用性があり芸術性の高い製品を作り出している。

  • ARITA PORCELAIN LAB(陶器/佐賀県)

200年余り続く有田焼の窯元、有田製窯の新ブランド。色使いを抑えたモダンなデザインの開発も行っており、現代のライフスタイルにもなじみやすい、機能性の高い製品を提供している。

  • 株式会社山下工芸(竹工芸、木工/大分県)

別府細工をはじめ竹工芸が歴史的に盛んな大分県から、テーブルウェアを中心とした新感覚の竹製品を国内外へ発信している。また、さまざまな業種とのコラボレーションにより、長所を掛け合わせた製品の開発を進めている。